はじめに
「手話エンターテイメント発信団oioi」という集団を知ってますか?
聞いたことないわ。ごめんなさい。
という方も多いのではないでしょうか?
私自身、正直なところ、昨年まで全く存じ上げませんでした(勉強不足ですみません…)。
先日、市の主催する「手話エンターテイメント発信団oioi」の講演に参加してきました。
昨年もやっていたのですが、申し込みが間に合わず参加できず…。
今年は満を持して家族一同で参加してきました。
小2と年中の娘たちには少し難しかったかな?と思ったのですが、親が想像する以上に楽しんでいたようです。
帰りには講演で教えてもらった「ありがとう」「へぇ~」「なるほど~」などの手話を2人で出し合っていました。
などなど。
手話やきこえない人について全く知らない人でも、楽しく学べることができる良い機会になりました。
「手話エンターテイメント発信団oioi」のみなさん、ありがとうございました!!
それでは、今回は「手話エンターテイメント発信団oioi」について書いてみたいと思います。
「手話エンターテイメント発信団oioi」とは?
そもそも「手話エンターテイメント発信団oioi」って、どんな団体なんだい?
「手話エンターテイメント発信団oioi」とは、その名の通り、手話を使ったエンターテイメント集団のことです。
「きこえない人」と「きこえる人」との間にある、目に見えない「バリアを壊す」ということを目標に、全国各地で様々な「ワークショップ」や「ステージパフォーマンス」などの活動を行っています。
ちなみに、「oioi」という団体名は、最初の合宿で部屋を借りる際に、
「とりあえず後で決めたらええから、適当につけよう。おいおい決めたらええやないか」
ということで、「oioi」という団体名になったそうです(笑)。
(参考:『耳の聞こえない人、オモロイやん!と思わず言っちゃう本』大谷邦郎、星湖舎、2019、p.15~16)
『耳の聞こえない人、オモロイやん!と思わず言っちゃう本』について
先日の講演で来ていただいた「リョージ」さんと「ノブ」さん。
あれ?どこかで聞いたことがある名前…
いや、つい最近どこかで読んだ気がする…
と、家に帰って速攻本棚を調べたところ。
ありました!
『耳の聞こえない人、オモロイやん!と思わず言っちゃう本』(手話エンターテイメント発信団oioi、大谷邦郎編著、(株)星湖舎、2019)
「リョージさん」も「ノブさん」も、ばっちり写真付きで載っておりました。
あー!!本持って行ってサインしてもらえばよかった!!と思ったのも後の祭り(笑)
お二人ともステージ上ではとても明るくて華やかで、ザ・エンターテイナー!みたいな感じでしたが、
本の中では学校生活での苦悩や、仕事場での苦労などがたくさん書かれていました。
実際にお会いしてからもう一度本を読みなおしたら、なんだか知り合いみたいな感覚になってしまって…
この前読んだ時より、あの明るいお二人が思い浮かんで心が痛く、せつなくなりました。
お二人のほかにも、oioiのメンバーの体験談がたくさん載っています。
- 「シーンとした静けさ」という表現も、実際に「シーン」という音が鳴っていると思っていた!という人がいた。
- 食事中、自分が食べ物を噛んでいる音がうるさくて先輩のはなしている声が聞こえない時があるので、先輩が話しているときは食べれなかった。(リョージさん)
- 講演会やセミナーなどに参加したい気持ちがあっても参加しづらいと感じている聴覚障害のある人も多い。
- おならの音が他の人に聞こえていると知ったのは、本当に最近という人もいた。
- 周囲と一緒に笑いたい。自分だけ笑えないと「ほったらかし」「置いてきぼり」にされているようで嫌だ。
- 落とした時の音が聞こえないので、落とし物をしても気づけない。(ノブさん)
- よく一番前に座らせてもらうのだが、学校の先生はよく黒板を書きながらしゃべる。教科書を持ちながらしゃべる。そうすると口元が見えないため、全く読み取れない。(ノブさん)
- 後ろで誰かが手を挙げていてもわからない。誰かがしゃべっていても気づけない。(ノブさん)
- 高校時代、柔道の大会の団体戦(大将戦)で、審判の「待て!」が聞えなくて反則負けになった。(ノブさん)
- 会社の会議で正直に「会議がわからない」と言ったら、上司に「どこまでわからないから君が議事録を作れ」と言われた。次の会議の議事録係を担当。終了後見せたところ、本当にほとんどわからなかったことがわかり、その後上司が横に座ってフォローしてくれるようになった。その後しばらく議事録係を担当したそうだ。現在も全員の顔が一番よく見えるところがノブさんの席になるとの事。(ノブさん)
- 高い音が聞えなくて、低い音は聞き取れる。あの子は男性社員とは話せるけど、女性社員を無視すると誤解されやすい。
- 逆に低い声は聞こえにくいけれど、高い声は聞こえるという人もいる。
- 小学校時代は、きこえないことを面白がられてよくからかわれた。
- 発音を真似された。
- 授業中に先生に使ってもらうエフエムマイクを取り上げられた。
- 本当に聞こえていないのかテストをされた。何かものを落として反応するかどうかをみられた。当時は「聞こえているけれど、分からない」ということを説明できず悔しい思いをした。
- 「聴覚障害者は全員手話ができる」というのは、実は誤解。
おわりに
最後に、本の中に書かれていたノブさんの言葉を書きたいと思います。
「僕は、強かった。」
「イジメられることもなかった。」
「確かにイジメはなかった。だけど、学校ではずっとしんどかった。(中略)
だったそうでしょ。分からないことばかりなんだから。
友だちと会話する時も、友だちの口を一生懸命見ている。しんどい。
先生は、自分がどう聞こえないかがわからない。
子どもは、それを説明できない。しんどい。
苦労しているんですよね、みんな。
みんながんばってる。
でも、大人からは『もっとがんばらないとダメだよ』と言われる。
これがつらかった。
もう、メッチャがんばってるのに。
これ以上、どうがんばればええんや、と。
学校でつらいのはイジメだけじゃない。
周囲の無理解がつらい。
自分が全然理解されていないことがつらかったのです。」と。
「みんなの話についていくために、漫画やゲーム、プロレスなどの知識を叩き込んだ。
キーワード1つ知っていれば、何とか会話についていける。」と。
あんなに強くて明るくて、「自他ともに認めるタフガイ」というノブさんでさえ、
学校生活で普通に過ごしていくには、こんなにも努力が必要だったのかと。
耳が聞えない、聞こえにくいという障害は目に見えにくいため、周囲に認知されにくい。
大人でさえなかなか理解が進まないのに、子どもに理解しろと言っても難しいのが現状だと思います。
しかし、oioiはその理解が進まない現状をぶち壊すため、きこえない人ときこえる人の壁をぶっ壊すために今も活動を続けています。
今回、oioiの講演を聞き、また本を読ませてもらい、最近ろう者との関係や手話について難しく考えすぎていたかもしれないと感じました。
ろう文化や手話について勉強すればするほど、文化も言語もコミュニティも違う、どこか外国のように感じていました。
そして知らず知らずのうちに、私自身聞こえない人とどんどん壁を作ってしまっていたかもしれません。
そういう自分では気づかなかった壁を、今回、oioiの皆さんに明るく優しく元気よくぶち壊してもらいました。
私に何ができるかはわかりませんが、これからもたくさん勉強して、今度は私がきこえない人と聴こえる人との壁をぶち壊していけるような通訳目指して頑張っていきたいと思います。
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