「ろう者」とは?
一般的に「ろう者」と聞くと、どのような人たちを思い浮かべるだろうか。
手話関係の人はよく聞く言葉かもしれないが、もしかしたら「ろう者」という言葉自体あまり知らないという人も多いかもしれない。
しかし、「ろう者」という言葉を知っているという人でも、そもそも「ろう者」とはどういった人たちを指すのか、実はあまりよく知らない、詳しくないという人もいるのではないだろうか。
かくいう私も、実は「ろう者」についてよく知らないのではないかと思い、今回「ろう者」に焦点を当て、詳しく調べてみることにした。
医学的な観点から見た「ろう」
医学的観点から見ると、
聴力レベルが100dB以上の人を、「ろう」といいます。
ちなみに、医学的には聴力レベルに応じて「ろう」「高度難聴」「中度難聴」「軽度難聴」とわかれている。
以下、それぞれの聞こえ方についてもう少し詳しく書いてみたいと思う。
100dB以上:「ろう」
日常生活において非常に深刻な影響を及ぼし、ほとんどの音が聞こえない状況。電車が通過する際のガード下や液圧プレスの近くで発生する音など、うるさくて我慢できないレベルの音が聞こえない状態。耳元での叫び声も音として認識できないことが多く、周囲の音や会話をほとんど聞き取ることができない。
70dB以上:「高度難聴」
日常生活において会話を理解するのが非常に困難である。耳から30センチほど離れた大きな声でも聞えるかどうかというレベルで、理解するのは難しい。
50dB以上:「中度難聴」
通常の会話を聞き取るのが難しく、大声で話しかけれらないと内容を理解できないことが多くなる
30dB以上:「軽度難聴」
日常生活では、特に小さな声での会話や騒がしい環境での会話、遠くからの音を聞き取ることが困難となる。
文化的・言語的観点から見た「ろう者」
このように医学的には聴力が100㏈以上の人、最重度聴覚障がい者を「ろう」と称する。
しかし、医学的観点で見た「ろう」とは別に、現在では、文化的な観点からも判断することが多い。聴力を失った時期や環境などにより、自らを「ろう者」とするかどうかは個人の選択にゆだねられているといえる。
文化的・言語的にみると、「ろう者」とは、聴力レベルに関係せず、主に手話を第一言語として使用し、音声言語に依存しないコミュニケーションを行う人達のことをいう。
「ろう者」は、主に手話を用いることで情報を伝達し、独自の文化とアイデンティティを持つコミュニティを形成している。
また、手話を通じて文化を伝承し、社会的なつながりを築いている。
「ろう者とは、日本手話という、日本語とは異なる言語を話す、言語的少数者である」-これが、私たちの「ろう者」の定義である。
これは、「ろう者」=「耳の聞こえない者」、つまり「障害者」という病理的視点から、「ろう者」=「日本手話を日常言語として用いる者」つまり「言語的少数者」という社会的文化的視点への転機である。このような視点の転機は、ろう者の用いる手話が、音声言語と比べて遜色のない、゛完全な”言語であるという認識のもとに、初めて可能になったものだ。
このように、「ろう者」は障がい者という枠を超え、言語的少数者としてのアイデンティティを持ち、自らを「ろう者」として認識しているといえる。
「ろう者」と「ろうあ者」の違い
「ろう者」と「ろうあ者」、どちらもなじみのない人もいるかもしれない。
しかし、この「あ」がつくか、つかないかでは大きな差がある。
「ろう者」とは漢字で書くと、「聾者」。
「ろうあ者」とは、「聾唖者」と書く。
「聾」とは「耳が聞こえない」という意味。
「唖」とは「口で話せない、しゃべれない」という意味の言葉であり、「聾唖」とは「耳が聞えず、口で話せない」という意味になる。
自分は「聾」ではあるが、「唖」ではない。
私は「ろう者」であって、「ろうあ者」ではない。
という人が多くいる。
「全国ろうあ者大会」だってあるし、「全日本ろうあ連盟」だって「ろうあ」って使ってるし、なぜそこまで「ろう者」であるという事を強調するのだろうと思っていたが…
おそらく、これは、なんとか口で話せるようにさせよう、口で話せないのはダメなことだという口話教育を長らく行ってきた反動ではないかと考えるようになった。
自分は「聾」、耳が聞えない障がいは持っているが、別に口で話せなくても手で話せばいいではないか。
べつに話は口じゃなくても手でできるではないか。
ということなのではないだろうか。
おわりに
ろう者とは、主に音声言語を習得する前に聴力を失った聴覚障がい者のことであり、医学的には聴力が100㏈以上の人、最重度聴覚障がい者のことを指す。
しかし、それだけではない。
ろう者は、聴覚障がいを持っている可哀そうな人たちではない。
手話を通じて豊かなコミュニケーションをはぐくみ、ろう文化という独自の文化を持った言語的少数者である。
彼らのアイデンティティやその独自の文化を理解し、社会的な課題を一つ一つ取り除く手伝いをしていくことが、手話通訳者には必要であると考える。
また、ろう者について周囲の人に教えていくことで、「こんなに魅力ある人たちなんだよ。自分たちと同じ一人一人の普通の人なんだよ」ということを伝えていければと思う。
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